家系図と行政書士





・家系図を作るきっかけ

8年間勤めてきた司法書士・税理士事務所を退職し、独立開業したのが平成16年の暮れです。司法書士事務所では、補助者として数多くの登記処理を行って参りました。その中でも、相続登記は件数も多く、日常的に戸籍の調査や相続関係の確定作業を行っておりました。そのおかげで、戸籍収集の実務に関しては豊富な経験と知識を蓄えることが出来たと思います。

他人の相続関係は数多く見てきましたが、ふと自分の祖先については、まったく知らないことに気付きました。相続が発生しない限り、自分の戸籍からさかのぼって、先祖の戸籍謄本類を収集することはまずありません。祖父や父親から「お前の曾爺ちゃんは、相当の酒飲みだった」とか、「先祖は相良藩の馬飼いだった」などと聞いたりするうちに、「自分の先祖を調べてみたい」「家系を辿ってみたい」と思うようになりました。



・戸籍調査

まずは、自分の両親や祖父母から、昔の話や先祖のことを聞くことから始めました。単に戸籍を収集するだけでなく、生の話を聞くことによって、自分の先祖達のことをリアルに想像できると思ったからです。
祖父からは、戦時中の話も聞くことが出来ました。中国へ出兵し、次から次に戦友を亡くし、命からがら逃げ帰ったことや、戦時中の精神状態からくる日本軍の行動など、色々な体験談を聞くことが出来ました。家系図の作成をしていなかったら、多分聞く機会もなかっただろうと思います。家系図の作成が、昔の話を聞く良いきっかけになりました。

さて、色々な人から色々な情報を仕入れて、いよいよ役所に戸籍の収集に向かいました。
まず、両親の戸籍の取得から始めます。直系尊属(親→祖父母→創祖父母・・・)の戸籍や除籍謄本は、戸籍調査のため(家系図作成のため)であれば、自由に取ることが出来ます。もちろん、戸籍や除籍を保管している役所に謄本の交付申請をしなければなりませんが・・・。私の場合、幸いすべての戸籍、除籍謄本が1箇所の役場で揃いました。しかし、明治30年に私の4代前の家長が分家届をしたところまではさかのぼれたのですが、その前の除籍は取れませんでした。役場によっては、80年の保存期間が過ぎても保管していて、請求があれば謄本を交付してくれるところもあるようですが、残念ながら、私の場合は廃棄されていました。5代前の先祖の名前は判りました。「金八」さんだそうです。おもわず、武田鉄矢さんが目に浮かびました(笑)。



・戸籍の内容を確認

続いて、事前に仕入れいていた情報と取得した戸籍類の内容を十分に調査しました。その結果、人の記憶というのはとても不確かなことだと判りました。また、代々言い伝えられてきたことや伝聞というのもまた曖昧なものです。ましてや、子供に知られたくない事情は積極的に話したりしませんので、戸籍を取ってみて初めて知ることも多いと思います。私の場合は、祖父の兄弟が聞いていたよりも随分多くおりました。昔は幼くして亡くなることが多く、戸籍上は記載があるものの、人の記憶としては残っていないということがよくあります。また、親戚でもなんでもないと思っていた知人が実は結構近い親戚だったりということも判りました。戸籍は、昔からの身分関係を公的に証明してくれるありがたいものです。除籍簿の保存期間を撤廃してもらうと、もっとよいのですが・・・。


・お寺の過去帳

戸籍制度が出来たのは、明治に入ってからです。1600年代から、武家でも庶民でもどこかの寺の檀家になることが義務付けられるようになりました。檀家となった寺のことを「菩提寺(ボダイジ)」といいます。この菩提寺で一族の葬式が行われ、そのたびに寺に記録が残されます。この記録には、各人の生年と没年、続柄などが書かれています。この記録を「過去帳」といいます。私の家の菩提寺に過去帳の閲覧を申し出たのですが、西南戦争で寺が全焼し、過去帳がほとんど残されていないということでした。通常、本家にも複製があるはずですので探してみたのですが、結局見つかりませんでした。


・分限帳

武士であれば、各藩で作成された「分限帳」なるものがあります。所属武士の名簿です。我が家の先祖も相良藩に世話になったことがあるという情報もありましたので、図書館にある郷土資料を調べてみたのですが、見つかりませんでした。

上記以外でも、親戚の話を詳しく聞いて回ったり、宗門人別帳や地域の郷土資料を細かく調査すれば、何らかの手がかりが見つかるかも知れませんが、今回はそこまでやりませんでした。結局、取得できた戸籍・除籍謄本の情報をもとに家系図の作成を行うことにしました



・家系図の作成

戸籍から私の祖先を書き出し、系図にしてみました。叔父・叔母の名前は、幼くして亡くなった人を含めて既に知っている人ばかりでしたが、祖父の代になると知らない名前も出てきます。戸籍等で、本籍どこどこの誰と婚姻したというのが判りますので、「ああ祖父の母親は○○から嫁いできたのだなぁ」とか色々な事が判り、人の繋がりというのを深く認識させられました。直系尊属の除籍謄本しか手に入りませんので、その範囲で判る情報はすべて書き出しました。私の子供も含め、30人分の情報が集まりました。


・巻物家系図の製作

知り合いの書道家に、巻物の家系図を作りたいので毛筆で書いて頂けないかと相談したところ、快諾していただきました。付き合いのある表具屋も紹介していただき、サンプル品も見せてっもらいましたが、正絹を使用した素晴らしい出来栄えの巻物でした。早速、我が家の家系図を持参し、毛筆で清書してもらい、表具屋で巻物に仕立ててもらいました。下の写真が出来上がり品です。

  
※プライバシー保護のため、一部画像を修正しております。


・総評

家系の調査とは、ただ単に先祖との関係を調べるだけではないことが分かりました。もちろん、戸籍類を収集することで、自分の知らなかった事実が判明しますし、取得した戸籍を眺めているだけで、先人達の生き様や生活が想像できたりして、とても感慨深くなります。しかし、家系図の作成をし巻物として出来上がった家系図や取得した戸籍類を見ながら両親や祖父母と話をすると、また違った話を聞くことが出来たり、祖父でも知らなかった事実が判明したりと、とても楽しいひと時を過ごすことができました。

また、現在の自分は色々な人の存在の上に成り立っているということを深く認識できましたので、不思議なことに生きることへの活力が沸いてきました。自分のルーツを探ることで、今の自分を再確認できたことは思わぬ副産物でした。また、私の子供達への想いも以前とは違うものになったような気がします。人の繋がりを再認識して、人間的に一回り強くなった気がしています。


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